絵本のすばらしさ、読み聞かせの重要性を発信している、「えほんがかり」のまこさん。
彼女の読み聞かせは、心にじーんと伝わる魅力に満ちています。
そんなまこさんにとって絵本とは? 読み聞かせとは?
子どもと向き合うためのヒントにもなる、親子の絵本の時間について聞いてみました。
《お話を聞いたひと》
えほんがかり まこ さん
「絵本 つながる ことば いのち」をテーマに、絵本の楽しさや奥深さを発信。“えほんがすきなおとな”、「えほんがかり」として活動する。読み聞かせ教室や講座(現在はお休み中)のほか、絵本と触れ合うきっかけづくりのために、さまざまなスポットに絵本を届ける「えほんがかり文庫」を自主企画し、全国47都道府県制覇を目指し活動中。NPO法人「絵本で子育て」センターで絵本講師過程を修了、現在は絵本講師の域にとどまらない自由な発想とフットワークで、絵本コミュニケーションを発信している。一児の母。
絵本を通して、優しく美しい言葉を伝える
ーまこさんが感じる、絵本の読み聞かせの魅力ってどんなところですか?
絵本って、誰にでもわかるやさしい言葉で綴られているんですよね。
美しくて、やさしい言葉が並んでいる絵本が、とても好きです。
絵本のなかの言葉の捉え方は、大人と子どもでは違うのではないかと私は思っています。
子どもにとって、絵本のなかの言葉は、それを読んでくれてる大好きな大人、ママやパパ、おばあちゃんやおじいちゃんの言葉。つまり、絵本のなかに出てきた「大好きだよ」というセリフは、子どもにとっては読んでくれている人からの言葉なんです。読み手である大人からのメッセージとして、子どもの中に入っていくと思います。身近な大人、大好きなママやパパに、そうしたやさしい言葉をかけてもらったらきっと嬉しいし、そこで美しい言葉にもたくさん触れられるのはとても尊い時間だと思います。
私も日々、慌ただしく子育てをしていて、つい心ない言葉を子どもにぶつけてしまい、反省することもあります。でも、一日の終わりに、一冊でもいいから絵本を読むことで、美しい言葉、やさしい言葉を、絵本を介して子供に伝えることができるんですよね。私自身、子育てをするうえで、絵本に助けられているなあと感じることが多いです。
ーとても心に響きます。だから絵本は身近な大人が読むことが大切なんですね。
そうなんです。
読み聞かせの時間は、絵本を通して、親子でその空間や感動を共感できる、とても大切な時間です。息子は今5才ですが、小学生になっても、高学年になっても、私はできることなら読み聞かせの時間を続けて楽しんでいきたいなと思っています。
ー絵本は、小さい子だけのものじゃないんですね。
読み聞かせは「字が読めない子どもに読んであげる」みたいな考え方をされることが多いです。一人で読めるようになったら「文字読めるでしょ、ひとりで読みなさい」ってことも、もちろんできますし、自分で読むことも確かに大切なことです。
でも、実は「読んでもらうこと」に意味があるんですよね。
読み聞かせは、「大人が子どもに読んであげる」ものではなく、親子のコミュニケーションのひとつの方法です。絵本の読み聞かせをきっかけに、親子で素敵な時間を過ごして欲しいなと、心から思っています。
文字の読み書きの前に、絵本をたっぷり楽しんで
ー忙しい子育てのなかですが、読み聞かせの時間は貴重な時間ですね。
そうですね。本当に短いあいだだと思うので、大切にしたいです。
もうひとつ、私が貴重だと思うのは、まだ文字を認識できない乳幼児の感覚。文字が読めない子は、目で絵だけを捉え、耳から言葉を得ています。
絵だけに集中していると、大人も見つけられなかったようなことを見つけることがあります。
「ここに見つけた」とか「ここに何かいる!」とか、「この雲、うさぎさんみたいだね」とか…。絵に入り込んでいる子どもだからわかることを、教えてくれることが多くてとてもおもしろいです。
これが、4〜5才頃に文字が読めるようになると、今度は一生懸命文字を追うようになるんですよね。もちろん、文字が読み書きできるようになるのはとても喜ばしいこと。でも同時に、「文字を認識せず、絵だけを見て世界を描く」ことを、卒業することでもあるんです。
私は、息子が文字を追うようになってはじめて、「絵本の“絵だけ”を純粋に楽しめる時期って、こんなに短かったんだ…!」と、なんだか少し寂しい気持ちになってしまって。
だから私は、文字の読み書きを急ぐこともないと思っていますし、どうか、この貴重な期間に、「美しい絵とやさしい声」で、絵本をたくさん楽しんでほしいと思っています。
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ライター 後藤麻衣子