yamatoyaでは、中原歯科医院の小児歯科医、中原弘美先生と一緒に正しい食事姿勢を研究しながら、健やかな成長を見守るベビーチェアの共同開発を行ってきました。
子どものお口の健康を通して、育児全般のアドバイスをしながら診療をしている中原先生に、食事中の姿勢や歯並び、体づくりについてインタビュー。
食事の際の正しい姿勢についてご紹介した前回に続き、今回は、乳幼児に大切な、体づくりの考え方についてお聞きします。
《お話を聞いたひと》
中原歯科 副院長
小児歯科専門医 中原弘美先生
1982年、岐阜歯科大学(現朝日大学歯学部)卒業。大阪府東大阪市で1983年に開院した「中原歯科」で、副院長をつとめる。小児歯科が専門。口腔内はもちろん、それだけでなく患者の身体の健康まで視野に入れた歯科診療を行っている。幼稚園や学校等での保健指導といった、地域への貢献も多い。歯学博士、一般社団法人日本小児歯科学会専門医指導医、ケアマネージャー、臨床研修指導歯科医、米国NLP TMプラクティショナー。
コロナ禍の今、見直したい体づくり
ー子育てをする日々で、心がけるべき習慣はありますか。
大前提として、「元気な体づくり」が何よりも大切です。
コロナ禍でおうち時間が増えたことに加え、園や学校では体を動かす課外授業や遠足、運動会などが縮小傾向となり、現代の子はコロナ前と比べると、外で体を動かすことが減っていると思います。
家でテレビを見たり、ゲームをしたり…と座っている時間が増えた子も多いのではないでしょうか。
姿勢に合わせて形状が変わる柔らかいビーズクッションや、フカフカのソファに、体ごと寄りかかるような姿勢が続くと、体の軸をキープできなくなってしまい、体がどんどん曲がっていきます。食事中に限らず、そうした何気ない時間の姿勢も、とても大切です。
ー乳幼児、まだ動き回れない子の体づくりは、どんなことができますか。
最近は「うちの子、こんなに早く歩いたんです!」と話してくださるお母さんやお父さんもいらっしゃいますが、私は「そんなに早く歩かなくてもいいよ」といつも伝えています。
それは、ずり這いやハイハイの時期をできるだけ長く取ることで、体の運動能力の基礎を築くことができるから。
特にハイハイは、赤ちゃんの発達に欠かせない大切な期間です。
手のひらで体を支える力、足の指で地面を蹴る力や背中の筋力もつき、体が傾いた時に自分を支えるために欠かせない筋力が付きます。
「歩けるようになった!」と、一大成長を喜びたくなる気持ちもわかりますが、ぜひハイハイができる環境を整えて、ハイハイ期をたっぷり楽しんでもらいたいです。
ハイハイがたくさんできる環境づくりを
ーハイハイがしやすいというのは、どんな環境ですか?
少しでもスペースがあればハイハイはできるのですが、一番動けるリビングに家具やソファがあって狭くなってしまうと、つかまり立ちが早まる傾向にあります。
また、テーブルの上やソファの上に、大人の荷物やインテリアなど、楽しそうなものがたくさんある大人目線の生活空間は、赤ちゃんの視線をどんどん上げてしまいます。
赤ちゃんが安心してハイハイができる広さをできる限り確保し、つかまり立ちに便利そうなものは一旦片付けるなどの工夫、さらに興味の湧きそうな安全なおもちゃを床に置いて、取りにいけるように誘ってあげましょう。
ー一度歩き始めてしまうと、ハイハイに興味なくなってしまいます。
歩くことが楽しくなると、どんどん「歩きたい!」という意欲ばかりで、なかなかハイハイに逆戻りすることは少ないですよね。
そういう場合は、段ボールを使ったトンネルをつくったり、お布団を積み上げてお山を作ってあげたり、布のようなものに潜って楽しめる遊びに誘ったりと、遊びの中でハイハイができる環境を作ってあげるのも良いと思います。
この時期の体づくり、体幹を鍛えることは、将来の運動能力にも関わってくる可能性があります。
跳び箱で、両手で自分の体を支えて着実に飛べる、鉄棒がスムーズにできるようになる、といった運動面はもちろん、立ったままバランスを取ってズボンなどの着替えができるといったことも、「体を支える力」に関わってきます。
あんよができる1才前後のお子さんとそのご家族には、「早く歩けなくても大丈夫」…というより私は「早く歩けないほうが丈夫になるよ!」と言っているほどです。
お子さんのペースで、じっくり体づくりをしていきましょう。
ーハイハイをする前の0才児ができる、体づくりはありますか?
寝返り前のタイミングでは、腹這いの状態を沢山経験させてあげると良いでしょう。
たとえば、おむつを替えるときに、一瞬腹這いの状態にしてあげるという習慣をつけたりして、いつもとは視界の違う世界で体を動かすチャンスをつくってあげるのです。
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ライター 後藤麻衣子