子育てや教育の考え方はさまざま。
その中の考え方のひとつの選択肢として、現在5才と0才の兄弟の子育てに奮闘中のモンテッソーリ教師で保育士の「demi(でみ)」さんに、お話をお聞きしました。
子どもが「自分でできた!」を実感し、自立して生活できるように、暮らしの環境を整えるコツや考え方を、モンテッソーリ教育の考え方で紐解いていく「今日からできるおうちモンテ」シリーズの前回に続き、第2回は、日々の子育てに「おうちモンテ」を取り入れるにあたって、demiさんが大切にしている考え方についてお聞きしました。
《お話を聞いたひと》
モンテッソーリ教師 / 保育士 / 整理収納教育士
demiさん
同志社大学文学部卒業後、ドイツ留学、教育企業での営業職を経て、保育士資格とモンテッソーリ資格を取得し教育現場を経験。その後1〜6才を対象とした「大阪モンテッソーリ幼児教室」を起業。モンテッソーリ教育の考え方を取り入れた子育ての工夫「おうちモンテ」をInstagramで発信。2017年・2022年生まれの兄弟の母。保育士、中高国語科教員免許、モンテッソーリ教師資格(Diploma of North American Montessori Center 3-6years)。
公式ブログ『モンテッソーリで子育て上手』
demiさんが考える「おうちモンテ」とは?
ーモンテッソーリ園での活動と、おうちで取り入れる「おうちモンテ」は違うんですか?おうちだからこそできることもありますか?
モンテッソーリ園では、普段の子どもが取り組む「活動」のことを、「おしごと」と呼びます。大人は生きていくために日々「仕事」をしますが、子どもは子ども自身を成長発達させること自体が仕事です。そのため、子どもたちの発達を助ける活動のことをモンテッソーリ教育では「おしごと」と呼びます。
モンテッソーリ園にはたくさんの教具、教材があり、経験のある先生や異年齢の子どもたちが周りにいることで、楽しく学べる環境があります。子どもたちが園で多くの経験を積める環境が整っていることは素晴らしいことです。ただ、家で実践する際に、モンテッソーリ園をそのまま再現しようとすると場所も教具もたくさん必要で、ほぼ不可能です。
だからこそ、私は「おうちモンテ」はモンテッソーリ教育の大事にしている本質を抑えつつも、アレンジすることが大切だと感じています。
子どもにとって家は、朝の仕度や服の着脱、料理や配膳下膳、こぼしたときの始末や掃除など、地味ではありますが永遠に繰り返される日常生活の本番の場所です。そして、モンテッソーリ教育で子どもたちの発達の土台として重視するのも「日常生活」なのです。
ただ、子どもに任せるより、親がさっとやってしまう方が早くて簡単なので、ついつい先回りしてやってしまいがちですよね。でもそれを、子ども自身ができるように環境を整え、声をかけながら地道に取り組むことで、子どもたちはたくさんの失敗と成功を経験し、心を満たしながら少しずつ自立していきます。
そして、実はその日常生活の自立が、脳の発育や手を育て、論理的思考力が必要となる知的分野の学習につながっていくのです。面白いですよね!
子どもの「ひとりで!」を、手伝う環境をつくる
ーなるほど。「おうちモンテ」を取り入れるにあたり、demiさんが大切にしている考え方があれば、教えてください。
おうちで実践するときに最も大切にしたいのは、「立派な教具よりも日常生活をいかに大切にするか」、これに尽きます。
繰り返しになりますが、モンテッソーリ教育の土台は「日常生活の自立」です。モンテッソーリ教育において、0才から6才の子どもたちのスローガンは「ひとりでするのを手伝って!」。子どもたちは日々、大人のようにできるようになりたい!と思っています。実際に、まだ絶対にできない年齢なのに「じぶんでやるー!」と叫んだり、うっかり手出しをすると激怒される時期って、ありますよね(笑)。
そんな成長意欲あふれる子どもたちの力になるためには、日々大人がしている家事や身支度を、まず見せること。その後、子どもがやりたがったら「自分で選ぶ」→「集中して繰り返す」→「自分で終わりを決める」というサイクルを邪魔せず、見守ることです。
失敗も含めて見守り、ひとりでできるように環境を工夫することで、子どもの心身が育っていきます。
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次回のvol.3では、demiさんが実践している「おうちモンテ」から、いくつか具体例を教えていただきます。お楽しみに。
前回の記事はこちら
今日からできるおうちモンテvol.1「自立を助けるお部屋づくりの考え方」
ライター 後藤麻衣子