yamatoyaのアイテムの開発秘話について深掘りしていく「家族の家具のこと、もっと話そう」シリーズ。
第一弾の「すくすくローチェア」編、第二弾の「そいねーる」編、第三弾の「ブォーノ3」シリーズ編に続いて、今回はリニューアルしたばかりの「ノスタ3」のお話です。
「ノスタ3」の開発を担当した、yamatoyaの企画開発部、製品開発チームのみなさんにお話をお聞きしました。
《お話を聞いたひと》
yamatoya 企画開発部のみなさん
ベビーベッドやベビーチェアをはじめ、yamatoyaの製品の企画・デザインはもちろん、製品開発や量産管理など、製造にかかわるさまざまなセクターを担当する、企画開発部のメンバー。左から、根兵さん、伊吹さん、奥村さん、松脇さん。
遊びながら自然と身につける、お片付けの習慣
ー2022年10月にリニューアルを発表し、11月下旬販売開始予定の「ノスタ3」。これまでのシリーズを踏まえて、どのように開発が進んでいったのでしょう?
先日の第3弾の記事でもご紹介した「ブォーノ」シリーズは、「遊びながら学ぶ」をコンセプトに、“デスクに向かうこと”の習慣づけや、遊びに没頭できる場所づくりを意識したシリーズになりました。yamatoyaには、こうした「あそぶ」カテゴリとしての子ども用家具のブランドが2つあり、もうひとつが今回紹介する「ノスタ」です。
コンセプトの再定義やリニューアルについては、2ブランド同時にスタートしました。
リニューアル前の現行品をベースに、それぞれのブランドの立ち位置やコンセプトを固めるために、子ども用デスクやチェアを使うとき、年齢によってできることや伴う行動について洗い出して分類してみました。
ー分類というのは、具体的にどんなことをしたんですか?
絵本棚を例に挙げると、1才ごろは「棚から絵本を出したりするのが楽しい」「絵本をめくったり破ったりして遊ぶ」といった行動です。
1才半〜2才ごろには、絵本の簡単なストーリーを理解できるようになったり、読んでほしい本を親へ手渡したり…ということができるようになります。
3才になると、読み聞かせ以外にも、自分で好きな本を出して、自由にめくって楽しむように。また、この頃から自分で片付けることが可能になります。
こういった行動を洗い出し、それにより得られる結果「指先が発達する」「絵本が好きになる」「定位置を認識する」なども導いて、一覧表にまとめました。
そうした分析を経て、新しい「ノスタ3」は、「遊びながら、自然に成長」というコンセプトに決まりました。
遊びのなかには、さまざまな学びがあります。誰かと一緒に楽しく使うこと、使ったものを片付ける習慣、ものを大切に使うこと…。それらを、親も一緒に遊ぶことで自然と身につけることができたら、素敵ですよね。
家具の存在によって、そんな遊びや片付け習慣を導くことができる、そんなシリーズになってほしいと願って、開発を進めました。
「正しい姿勢で座る」ことができるチェア&デスク
ー「ノスタ3」のデスクやチェアの特徴について、教えてください。
このリニューアルで、チェアのカラーラインナップが変わりました。ノスタのチェアは以前から北欧テイストのカラーを取り入れていますが、以前のモデルは淡く優しいパステル調の色味でした。
今回は、昨今の北欧カラートレンドでもあるアースカラーを意識しつつ、子どもらしさも感じられる落ち着いた色味にリニューアルしました。
木目の風合いを楽しむナチュラルを含む全5色。「明るく元気!」というよりも、少しくすんだ、最近のインテリアに馴染む程よい落ち着き感のある絶妙なカラーを目指して、微調整を繰り返しました。極端に「男の子っぽい」「女の子っぽい」というイメージに偏りすぎないように、という点も留意しました。
機能的なところの変更点は、高さの調整が細かくできるようになりました。
yamatoyaのベビーチェアの「正しい姿勢を保つ」という考え方を、今回の「ノスタ3」にも反映し、子どもの体の大きさによって細かく調整ができるように。
チェアは、以前は2段階でしたが、3段階で高さが変えられるようになりました。体の大きさに合わせて調整することで、座面に膝裏が触れて、足裏をしっかり床につけて正しく座ることができます。
ー「ノスタ3」シリーズは、全体的にとてもかわいい丸みを感じられて、優しいデザインですね。
デスクの天板にも丸みをつけて、優しい印象になるようデザインしています。
つくることだけを考えたら、丸いよりも真っ直ぐの方が製造効率は良いので、こうした丸みを帯びたデザインというのは製造工場の技術が必要不可欠です。開発時、現場との調整に苦労したところではありますが、とても納得のいく仕上がりになったと思っています。
また、細かいところですがチェアやデスクの脚の先の丸みも改めて見直しました。丸みを帯びた可愛い印象は残しつつ、床との接地面をより広くしたことで、安定感が増しています。
自分でやる!を尊重するデザイン&機能
ートイラックやブックシェルフも、以前から少しかたちが変わりましたね。
はい。トイラックは、上段を手持ち付きのボックス、下段をキャスター付きのワゴンにしました。おもちゃがたくさん入ることって、とても重要なポイントなんですが、たくさん入れると重くなってしまうので…。
ここから持っていくときも、片付けるときも、近くにゴロゴロ転がして移動できる仕様にすることで「自分でやる!」という自立心を育むことにつながるのではないかと思っています。
ブックシェルフは、下段の仕切り板が移動できるようになり、さらに収納の自由度が増しました。また、上部の本棚だけで使うこともできるので、月齢の小さいうちはこうしておくことで、絵本に触れて遊ぶことができると思います。
ーハンガーラックも、デザインが一新しましたね!
子どもが自分で掛けやすいように、全体のデザインから見直しました。また、以前はハンガーラックと別で「ポールハンガー」もあったのですが、今回のリニューアルでハンガーラックに一元化しています。
ハンガーラックは、子どもが自分で掛けられるように高さを2段階に調整可能で、お片付けの習慣を助けます。左右2箇所にフックがあるので、ポールハンガーのようにも使えますし、引き出し付きでたっぷり収納ができるようになりました。
ー材質についても教えてください。
「ブォーノ3」と同じく、ラバーウッド材を採用しています。
ラバーウッドとは「ゴムの木」のこと。「ノスタ3」に使用しているゴムの木は、計画的に植林・管理されているプランテーションの木材です。天然ゴムの原料になる樹液を採取したあと、本来なら捨てられていた木材ですが、最近は家具や建築に活用されるようになってきました。家具用に伐採されたものではなく、廃棄されるはずの木材を有効活用しているので、とてもエコなんです。
木目が穏やかで手触りも良く、硬いため細かな傷がつきにくいのも特長です。パイン材などと比べて少し重いですが、その重量が安定感につながるので、ラバーウッド材はこういった子ども用の家具に向いていると思います。
ーここでは語り尽くせないほど、「ノスタ3」のこだわりを教えていただいて、とても興味が湧きました。改めて、今回のリニューアルを振り返って、いかがですか。
「ブォーノ3」に続き、子ども家具のふたつのブランドを見直したことは、私たちにとっても子どもたちの暮らしを改めて見つめる、とても良い機会でした。
子どものための家具、子どもが「自分で使いたい!」と思えるサイズ感や仕様を目指しましたが、それは「家族みんなで使える」ということにもつながります。
ぜひ子どもたちだけでなく、パパ・ママも、おじいちゃん・おばあちゃんも一緒に使って「できた!」を一緒に体験してほしいです。そんな、親子や家族の関係づくりを、yamatoyaは家具づくりで応援していきたいと願っています。
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「ブォーノ3」に続いて、リニューアルについていろいろな話を聞かせていただきました。
ここに載せきれなかった細かなこだわりもたくさんありました。ぜひ実物に触れて、隠れたこだわりや作り手の思いを感じてもらいたいです。
企画開発部のみなさん、ありがとうございました。
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ライター 後藤麻衣子