みなさんは「リトルベビー」という言葉、耳にしたことがありますか。
2,500g未満で生まれた低出生体重児(※) のことを「リトルベビー」と呼びます。
小さく生まれた赤ちゃんとそのご家族が情報交換ができるサークルが今、全国各地で立ち上がり、リトルベビーやそのご家族をつなげ、支える活動、多くの人にリトルベビーについて知ってもらうための取り組みが広がっています。
今回は「愛知リトルベビーサークル『希望の光』」のお二人に、リトルベビーのことやサークル活動についてインタビューしました。
※低出生体重児…出生体重が2,500g未満の児のこと。その中でも、出生体重1,500g未満を「極低出生体重児」、1,000g未満を「超低出生体重児」と呼んでいます。このリトルベビーサークルは、出生体重が2,500g未満の児とその家族を対象としています。
《教えてくれたひと》
愛知リトルベビーサークル「希望の光」
代表 五島 香奈さん (写真左)
2014年12月に、25週5日742gで息子を出産。2021年9月に「愛知リトルベビーサークル 希望の光」を立ち上げる。一般社団法人体力メンテナンス協会 バランスボールインストラクターのほか、体力指導士・産後指導士の資格を持つ、産後ケアの専門家。産後ケアのエッセンスを取り入れながら、リトルベビーのお母さんたちが少しでも前向きに楽しく子育てができるように活動を広げている。
愛知リトルベビーサークル「希望の光」
運営スタッフ 黒柳 若葉さん (写真右)
元保育士。2017年・20年・21年生まれの、2才差3きょうだいの母。全員帝王切開で、第三子をリトルベビーで出産。NICU入院時に、ママやパパが赤ちゃんに触れることの大切さや効果を感じ、ベビーマッサージインストラクター、育児セラピストを取得して活動を展開する。
ショッピングモールで、リトルベビー写真展を開催
ーメンバーさんが集まる「お話し会」以外には、どのような活動をされているんですか。
五島 昨年2022年11月に、愛知県一宮市の「イオンモール木曽川」で、サークル初となるイベントを開催しました。
「世界早産児デー」の11月17日に合わせて、会場で写真展を中心とした展示を行いました。リトルベビー26人の出産直後の写真と現在の写真を並べて掲示して、リトルベビーのお母さんやご家族からのメッセージやエピソードを添えました。
黒柳 世界早産児デーのシンボルカラーは、多様性と思いやりを表す「紫色」。紫の風船や装飾と一緒に、大切な写真をたくさん展示しました。
それ以外にも、リトルベビーが使っていた4S・5Sといった小さなおむつの展示、体重400g・700g台の赤ちゃんの人形(ウエイトドール)も一緒に展示して、来場者のみなさんに自由に触れていただけるようにしました。
ーとても素敵ですね。そもそも、どのような目的でこのイベントを企画されたのでしょうか。
五島 今回、私たちは主に3つのターゲットを意識して企画しました。
1つ目は、リトルベビーとそのご家族など、当事者の方。同じ境遇の人とのつながるきっかけ作りがしたいというのが第一の目的です。
2つ目は、リトルベビーと関わっている方です。例えば、保育士や保育教諭、幼稚園教諭。そのほかにも、児童発達支援センターの先生や医療従事者の方々、保健センターで働く保健師さんなど、子どもと関わる方々に向けて、リトルベビーの実情や、リトルベビーのご家族の気持ちを知ってもらいたい、という思いです。
3つ目は、リトルベビーについて全く知らない方。今、10人に1人の赤ちゃんが早産で生まれているんですが、当事者にならないとなかなか知る機会がないんですよね。より多くの方の目に触れる、ショッピングモールという場所を選んだのもそのためです。
たくさんの人との、かけがえのない出会いがありました
黒柳 イベントでは老若男女、たくさんの方が足を止めてくださいました。
通りすがりに立ち寄ってくださったご年配の方が「今まで全然知らなかったけれど、こうやってがんばってる親子さんがいることを知って、とても心を動かされました」と涙ぐまれていたり…。ほかには「こういう親子さんに会った時に、どんな声かけをしたらいいかしら」と聞いてきてくださる方や、「私にもできる支援はあるんでしょうか?」など踏み込んだ話をしてくださる方もいました。いろいろな反応があって、イベントを開催して本当によかったと感じました。
私自身、出産してすぐは「早く産んでしまった」という自分を責める気持ちがとても強くて、実母にすら報告するのをためらってしまって…。一刻も早く報告しなきゃと焦る反面、なかなか理解しがたい出産だったので、言葉を選びながら親に報告した経験があったんです。
今回のイベントで、リトルベビーの祖母の立場の方ともお話ができたんですが、「娘が出産したとき、どう声をかけたらいいか悩んだ」という話や「出産おめでとう、と言ったけれど、本当に『おめでとう』でよかったのか…」というお話もしていただけて。
祖母側の葛藤の気持ちを話していただいたことで、母もこんな気持ちだったのかなと考えるきっかけになって、私にとっても印象的な出会いでした。
五島 イベントは、いろいろな立場の方との貴重な出会いの場だったので、エピソードを語り出すと止まらないんですが、私が特に印象的だったのは「自分自身がリトルベビーで生まれた」という方のお話でした。
私たちよりも年上の方で、母親から早産だったことは聞かされていたものの、当時の写真はもちろん残っていないし、どんな状態だったのか何もわからない、わかるのは「あなたは小さく生まれたのよ」と母親から聞かされていた出生体重だけだ、と。
その方は、400g・700g台のウエイトドールを手に取りながら、「母は、こんなに小さく生まれてきた私を育ててくれたんだ」と感動されていました。そして「自分のルーツを知ることができてうれしい、母に感謝したい。素敵な展示をしてくれてありがとう」と涙していらっしゃって。そんな貴重な出会いが、本当に語り尽くすと止まらないほどにたくさんあったイベントでした。
黒柳 そのほかにも、子どもと関わるお仕事をされている方や医療従事者の方などにも足を止めていただいて、いろんな話をすることができました。想像していた以上の波及や効果、反応を感じることができ、とても実りのあるいい機会になりました。
今後もこうしたイベントを、積極的に企画していきたいと思います。
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イオンモール木曽川での写真展イベントでは、たくさんの方との出会いがありました。
私たちも聞いていてウルウルとしてしまうエピソードもたくさん。
いよいよ次回は最終回。
今後のサークル活動について、お二人の展望についてもお聞きします。
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information
愛知リトルベビーサークル「希望の光」
Instagram:https://www.instagram.com/littlebaby_light.of.hope/
公式LINE:https://line.me/R/ti/p/@437kpwqr
メール:lbslof_kp@yahoo.co.jp
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リトルベビーと家族の思い、周囲の支え vol.1「愛知リトルベビーサークル 希望の光」
ライター 後藤麻衣子