「ベビーマッサージ」とは、ママやパパが、子どもにしてあげるマッサージ、そのスキンシップのことを指します。各地で教室が開講されていて、目にしたことのある人も多いのではないでしょうか。
「ベビーマッサージって、どうして赤ちゃんにいいの?どう取り入れたらいい?」と疑問に思っているママやパパのために、今回は、ベビーマッサージ・キッズマッサージインストラクターの黒柳若葉さんに、ベビーマッサージについてお話をお聞きしました。
《教えてくれたひと》
保育士
ベビーマッサージ講師
黒柳 若葉さん
2017年・20年・21年生まれの、2才差3きょうだいの母。全員帝王切開で、第三子をリトルベビーで出産。NICU入院時に、ママやパパが赤ちゃんに触れることの大切さや効果を感じ、ベビーマッサージインストラクター、キッズマッサージインストラクター、育児セラピストを取得して活動を展開する。
愛着関係を育み、発育を促すベビーマッサージ
ー改めて、ベビーマッサージについて教えてください。
ベビーマッサージは、1970年代にフランスの産科医が、当時インドで行われていた赤ちゃんへのマッサージを「ベビーマッサージ」として欧米に持ち込み、欧米の心理学や精神医学の学者によって研究され、メソッド化されてきたものです。私が考えるベビーマッサージは、「タッチケア」、つまり親子の愛着関係を育むために、とても大切なものだと捉えています。
ー黒柳さんは、どんなきっかけで、ベビーマッサージと出会ったんですか。
私がベビーマッサージに出会ったのは、長女を出産したときの育休中でした。せっかくだから子育てを楽しみたいと思って、ベビーマッサージ教室へ行ってみました。
実際にベビーマッサージを体験してみたら、思った以上に長女が楽しそうで、私自身も日々慌ただしい家事や育児のことを忘れて目の前の我が子をたっぷり愛でる時間が持てて、心からリラックスできたんです。
出産する前は保育士として保育園で働いていたので乳児と触れ合うこともありましたが、ベビーマッサージのように1対1の濃密な時間というのはあまり体験したことがなくて、とてもいい経験になりました。
ーそれで、資格を取得するに至ったんですか?
いえ、実はそれはもう少し後の話で。
長女とのベビーマッサージはそれなりに楽しめていたんですが、次女が生まれると二人育児に追われて、なかなかゆっくりベビーマッサージを取り入れる余裕がなくなってしまって…。ベビーマッサージとは、すっかり疎遠になっていました。
ー私も、第一子の育休中にベビーマッサージを体験して、すごくいいなと思ったんですが二人目が生まれてからはやらなくなってしまいました…。
ベビーマッサージを知っていても、きょうだいが生まれて余裕がなくなって疎遠になっちゃう…という方、とても多いと思います。私自身もそうでした。
三人目の長男は低出生体重児で生まれて、保育器の中で過ごす期間が長かった子だったんですが、NICUに入院しているとき「触ってあげてください」と看護師さんに言われて息子の体に触れたんです。当時、息子は自発呼吸が難しくて人工呼吸器をつけていたんですが、酸素の値が一時的に少し改善したことがあって、とてもびっくりしました。
NICUの看護師さんに「お母さんが触ってくれて、呼吸が楽になってきましたよ」と言われたときに、とても感動して。そのときに、親が子のからだに触れることは、とても意味のあることだと改めて感じました。
そこから、タッチケアやベビーマッサージの効果、赤ちゃんとの関わりに興味が湧いて、もっと深く学びたいと思って勉強を始めて、資格を取得しました。長男が2〜3ヶ月のうちから、家族みんなで触れ合う時間を意識して取るようになって、「家族みんなで体に触れ合う」ベビーマッサージやキッズマッサージの良さを改めて実感し、今も続けています。
ママ・パパの手が、発達や成長につながる
ー黒柳さんが感じている、ベビーマッサージの良さとはどんなところでしょう?
ベビーマッサージは、赤ちゃんの体の発育・発達が促されるだけでなく、親子の愛着関係を強くすることのできるコミュニケーションだと考えています。
私が長男の入院時に体験した、呼吸機能が良くなることもそのひとつ。そのほか、免疫が強くなる、肌質の改善なども期待できます。あとは、便秘などに悩んでいる乳児さんも、マッサージでおなかの調子を整えてあげたりもできると思います。
治療とか薬の服用ばかりではなく、「ママの手ひとつ」でこうした効果を期待できるのは、ベビーマッサージの魅力のひとつだと私は思います。
あとは、ベビーマッサージで、私がやさしく触れるところを見たり触れたりしているお姉ちゃんたちが、下の子に対してとても優しい関わりをしてくれるようになりました。そういう姿を見ていて、「家族っていいな」と思う瞬間が増えました。
ベビーマッサージをすることは、子どもにとってだけでなく、親にとっても、きょうだいにとっても、いいことがたくさんあると思って、日々の育児に取り入れています。
ー忙しい育児の日々ですが、どのように取り入れていけばいいでしょう?
「裸になって、オイルを準備して、これからベビーマッサージを始めましょう!」っていう日ももちろんあると嬉しいですが、それだけじゃなく、普段の生活の中に溶け込むようなタッチやマッサージであってほしいと、とても思います。
ベビーマッサージ教室で学んだいろんなマッサージを、たっぷり時間をかけて、それも毎日やるのはなかなか大変ですが、5秒でも10秒でも、その子のことだけを考えて触れる、声をかけるというだけでも十分なんです。
「ベビーの頃はやらせてくれたけど、キッズになってくるとなかなかできない」っていうお母さんも多いのですが、私はいつも教室で「短くても、うまくいかなくても、お子さんと関わる時間を持つ」ことが一番重要ですよ、とお伝えしています。
「ご機嫌な状態で、泣かせずに、マッサージを全部完了する」というのが目的ではありません。あまり形式にとらわれすぎず、ママが穏やかな気持ちでお子さんに触れて、それを我が子が受け入れてくれる、それで十分なんですよね。
ですので、例えばお風呂に入ったときにボディソープで洗いながらくるくると体をさすってあげたりとか、それも立派なマッサージだと思います。
ーなるほど。教室で教わった通りにやらなくちゃ!と意気込まなくても、教室で学んだことを、日々の生活に取り入れていけばいいんですね。
そうですね。
教室ではいろいろなマッサージをお伝えしていますが、それを全部やってねという理由でお伝えしているのではなく、いろんなマッサージ方法を知っておくと、日常のほんの一瞬を使って、我が子が喜ぶボディタッチを見つけることができるんじゃないかなと思って、お伝えしています。
でも、「せっかくベビーマッサージ教室に行ったからベビーマッサージの時間を取って、全部やらなきゃ…!」とタスクを増やしてしまうとママが大変になってしまうので、私はママが少しでも楽になるために、ベビーマッサージやキッズマッサージを取り入れてほしいなと思っていますし、私自身も家族みんなで、ベビーマッサージを日々楽しんでいます。
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思っているよりも気軽に、日々の子育てに取り入れやすそうなベビーマッサージ。あまり形式にこだわりすぎず、我が子との時間を楽しみたいですね。
第二回は「毎日のキッズマッサージで、子どもの心を育む」。キッズマッサージについてお聞きしていきます。
ライター 後藤麻衣子