「ベビーマッサージ」とは、ママやパパが、子どもにしてあげるマッサージ、そのスキンシップのことを指します。各地で教室が開講されていて、目にしたことのある人も多いのではないでしょうか。
ベビーマッサージ・キッズマッサージインストラクターの黒柳若葉さんにお話をお聞きするこのシリーズも、今回が最終回。簡単に取り入れられるベビーマッサージについて紹介します。
《教えてくれたひと》
保育士
ベビーマッサージ講師
黒柳 若葉さん
2017年・20年・21年生まれの、2才差3きょうだいの母。全員帝王切開で、第三子をリトルベビーで出産。NICU入院時に、ママやパパが赤ちゃんに触れることの大切さや効果を感じ、ベビーマッサージインストラクター、キッズマッサージインストラクター、育児セラピストを取得して活動を展開する。
一日数秒だけでも、服の上からでも大丈夫
ーこれまでのお話で、ベビーマッサージはとても気軽なもの、毎日の育児に取り入れやすいものだというイメージが持てました。
日々子育てに追われてると、できないこともたくさんありますよね。食事、お風呂、そこから流れるように歯みがきをさせて、寝かしつけをして…。
教室でいろんなママさんとお話をしていると、「平日は忙しくて、一緒に遊ぶ時間も、絵本を読む時間も取れなくて」とか、「寝顔を見ながら『今日も何もしてあげられなかったな』と小さな後悔を感じたりします」とか、ママからそんな相談を受けたことが何度かあります。
ー私も、寝かしつけのときに「早く寝て〜!」ってイライラしてしまったりするんですが、寝顔を見てると「さっきはなんであんなにイライラしてたんだろ」って冷静になって少し後悔すること、すごくあります…!
ありますよね。私自身も、時間や心の余裕がないことも多いので、とてもその気持ちはわかります。
そんな日も「お風呂のときに体を洗いながらマッサージできた」とか、「数十秒ずつだったけど、一人ひとりと向き合って触れながらお話ができた」とか、そういう「できたこと」があると、ママの気持ち的にもラクになれるんじゃないかなと思って、ほんの数秒でもいいから、子どものためにも、自分のためにも、取り入れてほしいなと思っています。
ーなるほど。それならできそうです。どんなタイミングで取り入れるのがいいでしょうか?
子どもが一番リラックスできる時間はお風呂と寝る前なので、そういう時にお子さんとちょっとした話をしながら「今日は足に触ってみようかな」って会話の流れで足をマッサージしてあげたりするといいと思います。2人や3人のきょうだいを育てているママやパパでも、子どもと1対1で関われる時間が作れるのでおすすめです。
ーそういうときに、簡単にできるマッサージを少しだけ教えてもらっていいですか?
いつでもどこでもできるのは、指の爪の両脇を軽くキュッとつまんであげるマッサージ。お子さんの疲労回復にもつながるので、寝る前などにしてあげるといいと思います。
寝る前じゃなくても、抱っこ紐に入れながら足の指をつまんであげたりとかもできるので、いつでもやってあげてほしいです。
足は、第二の心臓と言われてくるぐらい、足への刺激が全身の健康につながります。赤ちゃんは、足の指を軽く刺激してあげるのがおすすめです。
たとえば、車で移動中、チャイルドシートで泣いてしまうときや、寝てくれたらいいな、というとき。パパが運転でママがお子さんの隣に座っていれば、ちょっと足をマッサージしてあげると、それが入眠のきっかけになったりもします。
ー足や手は、いつでもマッサージできるのでいいですね。
そうなんです。足と手は、触れてあげるだけでいいので今日からすぐにでもできます。
子どもの脳は肌にあるって言われているくらい、肌からの刺激が脳に伝わりますし、子と親の愛着関係を育んでいくことにもつながります。
おもちゃや特別な道具を使わなくても、ママやパパの手のひらひとつでできるベビーマッサージをちょっと取り入れるだけで、子育ての役に立ててもらえると思います。
あとは、マッサージや体を使った遊びをすることで、子どもはママやパパの匂いを感じて、安心感に満たされることがとても多いです。
安心感を得ている子、愛着関係が強い親子ほど、自立へつながっていくともいわれています。
毎日触れることで、体調の変化にも気づける
ーそのほかには、どんなマッサージがありますか?
あとは、ハートの手で赤ちゃんの胸にそっと手を当てて、ママも一緒に深く深呼吸をするというのもおすすめです。
子どもの心臓、心拍を感じながら一緒に息を吸って、吐いて…という感じですね。ママが安心して呼吸していることが子どもに伝わるのも、お互い穏やかな時間が過ごせると思います。
ーそれも、気軽にできそうですね。どんなタイミングでやるといいですか?
いつでもいいですよ。
お着替えで服を脱ぐときでもいいですし、服は着ていても大丈夫です。例えば寝る前にいつもやってあげることで、入眠へのルーティンになるというやり方もあると思います。
私はいつもこれをやってるので、心拍数の速さがいつもと違うと「体調崩しそうだな」とか、「このあと咳出てきそうだな」とか、予測できる日もあるんですよ。毎日やっていると、子どもの不調にも早く気づけることが多いです。
お風呂上がりに保湿剤を塗る、その延長で最後にママの手で魔法をかけるみたいにマッサージしてあげるだけで、子どもはとても安心します。
教室ではいろんなマッサージの仕方をお伝えしていますが、日々の忙しい育児に、どんなふうに取り入れていくかについてもお話ししています。
ー触れるとき、マッサージをするときの力加減や、気をつけることはありますか。
月齢が小さいほどそうなんですけど、触れてるか触れてないかぐらいの触り方で、摩擦や痛みにならないようにしたいですね。
赤ちゃんが喜びやすいマッサージでも、人それぞれ好きだったり苦手だったりするので、毎日触れながら、その子が気持ちよさそうなマッサージを探っていってもらえるといいかなと思います。
教室では密着の良いマッサージオイルを使って撫でる方法をお伝えしています。
1対1で我が子と向き合い、関わる時間
ーやっぱりマッサージには、オイルを使うといいんですか?
服を脱がせてマッサージオイルを使うと密着が良くなって滑りもよくなるのでやりやすいですし、効果も高まります。オイルを使う良さはもちろんあるんですが、「いつも必ず使わなければいけない」というわけでもないと私は思っています。
私自身、次女が生まれたばかりで、育児に追われてベビーマッサージができなかった大きな理由が「バスタオルを敷いて、裸にして、オイルをつけてやってあげなきゃ」という固定概念がハードルを上げていたんですよね。
でも今は寝る前にオイルをつけないで、服の上からやってあげたりもしますし、指や足の裏のマッサージなら、服を脱がなくても素肌に触れることができます。
マッサージは、1対1でじっくり関わることもできますし、家族やきょうだい、みんなで楽しむこともできます。我が家の場合は、お姉ちゃんたちと末っ子が触れ合って遊ぶときは「まだ小さいから、やさしくさわろうね」と伝えつつ、みんなでマッサージしあったりして、楽しんでいます。
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全3回にわたって、ベビーマッサージ・キッズマッサージについてご紹介してきました。
今日からすぐに取り入れられるマッサージ、ぜひお子さんと1対1で関わる時間を、ほんの数分でもいいのでつくってみてくださいね。
黒柳さん、素敵なお話を聞かせていただき、ありがとうございました。
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ライター 後藤麻衣子