2024年7月2日に、創立100周年を迎えた大和屋。
その週末の7月6日に、100周年特別イベント「壁画アーティスト河野ルルさんと大きな絵を描こう!」を開催しました。
大和屋本社一階、直営ショップ「Shop yamatoya ANJO」の入り口横を、壁画アーティストの河野ルルさんの壁画で彩るこの企画。
その制作の過程を子どもたちと一緒に楽しむ参加型企画をレポート!完成後に、ルルさんへミニインタビューをしました。
《ご紹介》
壁画アーティスト 河野ルルさん
1987年生まれ、愛知県名古屋市出身。2015年、長い海外放浪の途中で、財布の中身がうっかり底をついてしまい、流れ着いたメキシコの宿で「壁に絵を描く代わりに宿泊させてほしい」と相談。その出来事をきっかけに、絵を描く楽しさに目覚め、帰国した2016年より絵描きとしての活動を開始。たくさんの国々を訪れるなかで、貧しい環境で暮らす子供たちに自分の絵で何か貢献したいと思い、チャリティで世界中の公共施設や病院、学校に壁画を描きに行くようになったことが、いつしかライフワークに。国内外を問わず「ルルの絵は、みんなを明るく笑顔にする」と喜んでもらえることが、活動の大きな原動力となり、今日もひたすらに絵を描き続けている。
Instagram lulu_kouno
ホームページ https://lulukouno.studio.site/
子どもたちとの共作!大和屋本社に壁画が誕生
大和屋100周年を記念した、とても素敵な壁画が誕生しました!
描いてくださったのは、愛知を拠点に活動しつつ、国内外をめぐって壁画を描く“壁画アーティスト”、河野ルルさん。
今回は大和屋100周年を記念して、子どもたちと一緒にこの壁画を描くイベントを7月6日(土)に開催しました。
梅雨時の開催となり、天気の心配をしていましたが、イベント当日は晴れ!
3才から7才までの6人の子どもたちとその保護者のみなさんが集まってくれました。
絵を描く前にみんなで原画を囲んで円になり、ルルさんを中心に作戦会議。
「こんな感じの絵を描きたいんだけど、みんなも一緒に描いてくれるかな?」とルルさんが提案すると、子どもたちは興味深そうに原画を見ながらふむふむと頷きます。
子どもたちに託された作業は、ルルさんがふちどりをしてくれた木や枝に、塗り絵をするように色を乗せていく大事な工程。
絵の具や筆の使いかたを教えてもらって、練習もせず早速壁に色を塗っていきます!
小さな葉っぱを塗る作業や、木や枝のふちどりをするのは、細かい作業ができそうな、大きなお姉ちゃん・お兄ちゃんが担当。
小さな子たちは、はみ出さないように広い面を塗る役をがんばりました。
最初は慎重に少しずつ塗っていた子も、気分が乗ってくると勢いよく筆を動かして、ダイナミックに色を重ねてくれます。
髪や顔、服にペンキをつけて笑い合いながらも、集中して色を塗っている姿が印象的でした。
参加をしてくれた保護者の方からは、こんな声も。
「壁に絵を描いたり色を塗るということ自体、はじめてでした。とても楽しそうでした。完成が楽しみです!」
「お絵描きが大好きな弟が喜ぶかなと思って、兄弟で応募しました。普段はあまりお絵描きをしない兄の方が張り切っていて、ルルさんに褒めてもらうと“もっともっと!”と、とても意欲的で。意外な一面を見ることができて、とてもびっくりしました」
ルルさんから託された色を、思い思いに塗って楽しんだ子どもたち。
無事に任務は完了!
最後には、みんなで記念撮影をしました。
みんなが塗ってくれた色はそのまま活かして、ここからルルさんが仕上げてくれるというお約束をして解散となりました。
“成長”をイメージした、不思議な森の壁画
ルルさんがこの壁画を描きはじめたのは、このイベントの2日前。
天気とにらめっこをしながら、壁画制作がスタートしました。
今回の100周年記念企画に合わせてルルさんが提案してくれた原画は、何本もの木が並んだカラフルな森の絵。
「木」「子ども」「成長」をキーワードに、ルルさんがつくってくれたとても素敵な世界観です。
途中、大和屋の社員も色塗りに参加させていただきました。
はみ出さないかな、と心配しながらも、なんとか塗り終え、「とてもいい記念になりました!」と、嬉しそうな笑顔でした。
子どもたちと一緒に絵を描くイベント当日は、子どもたちの背丈に合わせて右端の木の下側を制作。
その日の午後、その木を仕上げていただき、いよいよ壁画が完成となりました!
6本の木がならぶ、不思議な森。
やわらかなタッチとカラフルで温かい色づかいと、想像力豊かな楽しいモチーフで描かれた木たちから、現実と空想のあいだにある世界に迷い込んだような気持ちが膨らんでいきます。
一番左の木から順に、二羽の鳥たちと生まれたばかりの人間の双子の赤ちゃんが、少しずつ姿を変え、成長していく姿が描かれています。
眺めているだけで、温かくてやさしい気持ちがもくもくとあふれ出し、それが想像力となってふわふわと広がっていくような。
そんな、可愛くて楽しくて、想像力を掻き立てるような壁画が完成しました!
河野ルルさんに聞く、壁画制作や活動への想い
河野ルルさんへ、今回のイベントや彼女自身の活動について、インタビューしました。
ー今回のイベントは、どんな経緯で描いていただけることに?
次の壁画の場所を探すためインドネシアに行ったとき、現地でお世話してくれた方がいるのですが、実はその方と大和屋の太田社長が繋がっていて…!
同じ愛知なのに、なぜかシンガポールで繋がるという不思議なご縁でした(笑)。
それで今回、100周年を迎えられるとのことで声をかけていただき、こうして社員のみなさんや、大和屋さんのお客様のキッズたちと一緒に絵を描き上げることができました。
ーこの壁画のデザインに込めた思いについて、ぜひお話いただけますか。
大和屋さんが100周年という節目の記念ということもお聞きして、大和屋さんにヒアリングをしながら「木」「子ども」、そして周年を迎えてあらためて未来を見つめる「成長」というキーワードで考えました。
全部で6本の木があるんですが、左から右へと、“成長”していきます。
双子の赤ちゃんと、2羽の鳥たち。その2つの卵から孵った小鳥たちが、赤ちゃんと一緒に成長していく様子を表現しました。
ールルさんは今回のように「壁に絵を描く」ことを、活動の中心とされているんですよね。
はい。
国内に限らず海外からも、こうしてご依頼をいただいて絵を描くことも多いです。活動内容はイベントやライブペインティングのほかにも、イラストの提供などもありさまざまですが、やはり壁に絵を描くことが私の活動のメインです。
そのようなご依頼にお応えするお仕事に加えて、チャリティで海外へ壁画を描きにいくことが、ライフワークのひとつになっています。
ーどのようなきっかけで、海外での活動が始まったんですか。
2015年に約一年間、海外放浪の旅をしたんですが、メキシコで財布の中身がうっかり底をついてしまって…。当時は壁画を描いたことなんてないのに、メキシコで辿り着いた宿で「壁に絵を描く代わりに泊まらせてほしい」と相談したら、意外にも受け入れられて、そこではじめて壁画を描きました。でも実はメキシコの前に行ったトルコでの経験も、私の絵描きとしての原点になっています。
トルコで、アンティーク雑貨屋かと思って迷い込んだ建物が、ある画家のおじいさんのアトリエでした。そのおじいさんに絵の感想を伝えたら「これに何か描いて」といわんばかりに真っ白なキャンバスと絵の具を渡されて。そこから一週間ほど、そのアトリエで画家のおじいさんと一緒に絵を描く時間を過ごしました。
もちろんそんなふうに絵を描くのは初めてのことで、一週間後にうまく描けないまま別れたんですが、振り返るとその一週間があったからこそ、メキシコで「描ける気がする」と思えたのかもしれないな、と。
窮地に立たされていたとはいえ、日本で描いたこともない壁画を申し出たのは、その経験のおかげだと思っていますし、それがあって私は今も絵を描いているんだと思います。
ールルさんはいろんな国で、いろいろな壁に絵を描かれていますよね。
そうですね。
行く先々でたくさんの人と出会い、たくさんの壁に色をつけてきました。
旅好きが高じて、こうして旅先で絵を描くようになって、各国の子どもたちと触れ合っているうちに、日本との“差”にも気づき、疑問を覚えるようになりました。
日本の子どもは絵を描きたいといえばあらゆる画材がすぐに手に入るけれど、そもそも気軽にお絵描きなんてできない国、鉛筆一本すら買えない子どもたちもいることに直面し、同時に違和感を抱きました。
それからは、貧しい環境で暮らす子どもたちにできることは?自分の絵で何かできることはないか?と自問自答しつつ、いろいろな国へ出向いて、その土地の人たちと仲良くなって、壁画を描いています。
今は各地の人たちと仲良くなって、中には毎日のように連絡が来る子もいます。海外での壁画がライフワークになってから、世界中に大切な家族や友達が増え続けている、そんな感じです。
ー今回のイベント「河野ルルさんと大きな絵を描こう!」を振り返っていかがでしたか。
暑い中ではありましたが、子どもたちがとても楽しそうに参加してくれていたのが印象的でした。みんな物怖じせず、想像以上にダイナミックな筆運びを見せてくれて、とても頼もしかったです。
イベントを含め、壁画の制作期間は7月初旬とは思えないほどの酷暑で、毎日暑さとの戦いでしたが、大和屋のスタッフのみなさんが毎日私のことをとても気遣ってくださって…。本当に心温まる3日間でした。
参加してくださった親子さんはもちろん、大和屋のスタッフのみなさんも一緒に描き上げた壁画だと思っています。
改めて大和屋さん、100周年おめでとうございます!
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イベント日も含め、丸3日かけて大作を生み出してくださった河野ルルさん。
驚いたのは、下絵やガイドラインなどナシで、いきなり壁に絵の具を乗せてフリーハンドで描いていくその姿でした。絵の具が混ざりあい、素敵な絵がどんどん生み出されていきます。
美しい線と鮮やかな色彩、そして見ている方の頬が思わず緩んでしまう温かい世界観の絵。それを、参加してくれた親子や大和屋の社員もみんな参加して完成させるという、思い入れ深い壁画となりました。
ルルさん、素敵な壁画を、そして素敵な時間をありがとうございました。
ライター 後藤麻衣子