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BLWの考え方に学ぼう〈前編〉離乳食期スタートの心構え

2024.10.02

離乳食や幼児食の考え方のひとつとして、最近耳にすることが増えてきた「BLW」。

BLWとは、「Baby-Led Weaning」の略で、赤ちゃん主導の離乳のこと。日本でも少しずつ広がりを見せています。

今回は「一般社団法人 日本BLW協会」の代表理事である尾形夏実さんに、BLWについてお話をお聞きしました。


教えてくれたひと

一般社団法人 日本BLW協会  代表理事
看護師

尾形夏実さん

2019年に長女を出産。日本の離乳食に疑​問を抱き、BLW と出会い、2人の子ども​に実践。同年、一般社団法人日本BLW協会を設​立。自身が講師を務めるセミナーのほか、BLWの提唱者であるGill Rapley氏を日本​に招き、ワークショップ等のイベントも開催。著書に『BLW をはじめよう(原書房)』​。

 

イギリス発、赤ちゃん主導の離乳法「BLW」

 

ーまず、BLWについて簡単に教えていただけますか。

BLWは「Baby-Led Weaning(ベイビー・レッド・ウィーニング)」の略で、イギリスの保健師であり助産師でもあるGill Rapley氏によって提唱されました。
「赤ちゃん主導の離乳法」という意味があり、食べる量やペース、順番などを赤ちゃん自身が決めて進んでいく、イギリス発の離乳食の考え方で、日本でも少しずつ認知されてきています。

一般的には、生後6ヶ月ごろに離乳食がはじまるタイミングに、親がスプーンで与える方法が多いと思いますが、BLWでは最初から赤ちゃん自身が自分の意思で食べ物を口に運びます。
食べる量も順番も、食べるペースもすべて赤ちゃん任せ。
食べても食べなくてもOK、食べもので遊ぶのも大歓迎!という、離乳の考え方です。

 

ー具体的に、どのような方法で進めていくのですか?

離乳食のスタートというと、とろとろのお粥やピューレ状の野菜などをスプーンで食べるイメージが一般的だと思いますが、BLWでは「赤ちゃんが手で持ちやすい形の固形物」を準備します。
やわらかく茹でた野菜や、窒息の危険のない果物から始めるケースが多いですね。
もちろん、離乳食の初期から必要となってくる栄養素を補うための赤身のお肉やお魚も柔らかく加熱して提供できます。

保護者が準備するのは「安全でリラックスした食事環境」と「安全で健康的な食べもの」。そして、「赤ちゃんが食べ物を探求する機会」を与えることです。
食べるか食べないかは、赤ちゃん自身が決めます。それを見守っていきます。

BLWを開始しても、実は最初は口に入れることはほとんどありません。
食べないと「栄養が摂れていないかも…」と不安になる方もいるかもしれませんが、実は離乳食の初期の頃は、従来の方法であっても、離乳食から栄養を摂ることを目的にはしていません。
この時期に大切なのは、母乳や育児用ミルク以外の新しい食材に出会い、慣れていくことです。

 

「赤ちゃんが自分の意思で食べるようになるのを待つ」。

それが、BLWの考え方です。赤ちゃん自身が、目の前のものを「食べもの」だと認識し、自分の意思で初めての食事をする過程は、本人にとっても貴重な学びであり、その後の食事につながる経験になります。
こうして「食べる」経験を積むことは、結果的に赤ちゃんが“食”とのポジティブな関係を構築し、さらに赤ちゃんの自尊心と自信を育むと、私は思っています。

気をつける点としては、塩や砂糖をごく控えめにすること、窒息の危険性がある素材に気を付けること、肉魚にしっかり火を通すこと、ハチミツをあたえないことなどが挙げられます。

 

子育て中のママやパパに、BLWのマインドを

ー食材を準備する際に、心がけることはありますか。

「興味を示したもの」「いつも口に入れるもの」ばかりを偏って準備するのではなく、常にいろいろな食材を準備することが大切です。
これはBLWに限らず、従来の離乳食でも同じことが言えると思います。

離乳期の赤ちゃんの「好き嫌い」には、大人が想像する以上に揺らぎがあって、昨日食べなかったからと言って、今日突然食べることもあります。
その日の体調や機嫌にも大きく左右されていると考えられます。

保護者が「葉野菜は以前吐き出したから…」「ニンジンは食べてもらえなかったから…」と、その後食卓から遠ざけてしまうと、赤ちゃんはその食材との出会いを断たれてしまうことになります。

私はセミナーなどで、「好き嫌いは最低でも15回〜20回以上提供してから判断しましょう」と伝えています。脳に味をインプットさせることが大切なため、ぜひ慣れるまで繰り返し食卓に並べてみてください。

食べるか食べないかは、赤ちゃん自身が決める。
「残す」ことは決して悪いことじゃない。
食べもので遊ぶことは、本人にとって学びであり経験。

可能な限りで構いません、大らかに見守ることができれば理想です。
食べない・残すことに対して過度に落ち込まず、「今日はそんな気分だったんだね」と、気長に見守る気持ちで、食卓にいろいろな素材を登場させてあげてほしいです。

 

ー離乳や離乳食について大切にしていることや、今がんばっているママやパパに伝えたいことはありますか。

BLWは「赤ちゃんの意思を尊重して、食べる意欲を育てていく」離乳法です。
赤ちゃんが興味を持ったら、心ゆくまで探求させてあげること、離乳食のマニュアルに縛られすぎず、赤ちゃん自身のアクションを待って進んでいくことで、たくさんのメリットがあると思っています。

私は、従来の日本の離乳法はマニュアル化されすぎてしまっていて、かえってそれがママやパパを悩ませる原因になっているような気がしてなりません。

日本人の性格的に、「1日目はスプーン1杯、2日目は…」と、決まっていた方が進めやすいという人が多いのもわかりますが、離乳食関連の書籍や記事の中には、毎食の献立が事細かに決まっているものもあり、そうしたマニュアルに逆に追い込まれてしまうママやパパもいると思うんです。
マニュアル化されすぎることで、ママやパパが「これくらいがんばるのが常識」と思い込み、がんばりすぎてしまうことも、私は心配しています。

「離乳は赤ちゃんのペースにまかせる」というマインドだけでも知ってもらえると、まじめでがんばり屋のママやパパの肩の荷が、少し降りるのではないかとも思っています。

もちろん、BLWに興味を持ってくださる方は、イギリス式のやり方を導入してもらうのもいいと思いますし、今お話したBLWの“マインド”を忘れずに、自分がやりやすい形で離乳食を進めていただくのもいいと思います。
ぜひ、かわいい我が子と一緒に、今しかない時を楽しんでもらえたら、嬉しいなと思っています。

 

ライター 後藤麻衣子

 

※食物不耐性、アレルギーまたは消化器疾患の家族歴がある場合、または赤ちゃんの健康や発達に関する不安がある場合は、BLWの導入についてかかりつけの小児科医と話し合ってください。

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一般社団法人日本BLW協会代表理事 看護師

尾形夏実

2019年に長女を出産。日本の離乳食に疑​問を抱き、BLW と出会い、2人の子ども​に実践。同年、一般社団法人日本BLW協会を設​立。自身が講師を務めるセミナーのほか、BLWの提唱者であるGill Rapley氏を日本​に招き、ワークショップ等のイベントも開催。著書に『BLW をはじめよう(原書房)』​。

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