現代の子育て事情は、ひと昔前とは大きく変わっています。

そんな世代間のギャップを埋め、家族みんなで心地よく「子育て」「孫育て」をしていくために、NPO法人「孫育て・ニッポン」が提唱する孫育ての心得が、「孫育て10か条」です。

今回は、シリーズ最終回。NPO法人「孫育て・ニッポン」代表のぼうだあきこさんに、「孫育て10か条」と「祖父母とのおつきあい10か条」を通して、無理なく、楽しく、そしてお互いを思いやりながら、子育て・孫育てを進めるための心得を教えていただきます。

《教えてくれた人》
NPO法人 孫育て・ニッポン　代表理事
ぼうだあきこさん

「NPO法人孫育て・ニッポン」理事長のほか、「NPO法人ファザーリング・ジャパン」理事、「一般社団法人産前産後ケア推進協会」監事、「３・３産後サポートプロジェクト」リーダーなど。産前・産後アドバイザー、防災士。
編集者としてのキャリアを持ち、育児雑誌や医療系の編集、育児サイトの立ち上げ・運営など、多岐にわたる分野で活躍。2011年に「NPO法人 孫育て・ニッポン」を設立し、子育てや孫育てに関する講座やプロジェクトを全国で展開し、家族間や地域社会での子育て支援の輪を広げるための啓発活動を行う。各自治体で配布されている「祖父母手帳」の制作も担う。著書に『祖父母に孫をあずける賢い100の方法』（岩崎書店）、2024年4月に発行したばかりの『娘が妊娠したら知りたい50のこと』（イースト・プレス）監修。

NPO法人 孫育て・ニッポン　https://www.magosodate-nippon.org/

祖父母世代が心得ておきたい「孫育て10か条」

ー「NPO法人 孫育て・ニッポン」さんの公式Webサイトに「孫育て10か条」があり、とても興味深く拝読しました。

「孫育て10か条」は、「孫育て」に意気込む祖父母世代に、ぜひ心得ていてほしいことをまとめたものです。
社会の変化が大きい今、祖父母世代も経験したことのない境遇の中で、孫を迎えることになります。
一世代前とは違い、フルタイムで働きながら、親の介護や孫の面倒も見るという状況の人も多いのが現状。子育ての環境が変わっているのと同じように、孫育ての環境も激変しています。

「孫育て10か条」には、「1.育児の主役はパパ・ママ、祖父母はサポーター」「3.今と昔の子育ての違いを知る」「5.他の子、親と比べない」といった、孫と接するときに気をつけたいことに加えて、それだけではない“自分自身”を大切にしてほしい、という想いも込めています。

それが「6.断る勇気も持とう」「9.自分のライフスタイルも大切に」などです。

孫も大事ですが、それと同じように自分自身の生活や趣味の時間も大切にしてほしい。
頼ってくれる息子や娘のためにがんばりすぎてしまい、体や心を壊してしまっては意味がありませんよね。
祖父母が元気でなければ、三世代での楽しい時間は生まれません。子どもや孫を大切にするのと同じように、自分のことも大切にしてほしいなと思います。

祖父母世代が気をつけるべき10か条があるように、パパママ世代が祖父母とのおつきあいをするうえで気をつけたいことを「祖父母とのおつきあい10か条」として、こちらも10の項目にまとめています。

パパママ世代には「祖父母とのおつきあい10か条」

ー「祖父母とのおつきあい10か条」ですか。こちらも、とても興味深いです！

パパやママたちが、時々勘違いしているなと感じることがあるのですが、「うちの親は、孫が可愛くていろいろしてくれている」と思っている人が多いんですよね。
もちろん、孫が無条件で可愛いというのもあるとは思いますが、実はそれと同じくらい、むしろそれ以上に、「娘や息子が頑張っているから、応援したい、助けてあげたい」という気持ちが大きいはずです。
祖父母の皆さんがそれを我が子に直接伝える機会はあまりないので、「孫が可愛い」というところばかりに注目が集まりますが、実は親は自分たちのことを想って、こんなに手を差し伸べてくれているんだ、というところを、まずは知っておいてほしいです。

そのうえで、パパやママにも心がけてほしいことがあります。
「3.育児方針、してほしくないことを祖父母に伝える」という、情報の共有が必要である一方で、「6.預けた時は、文句を言わない」という心持ちも大切です。

子どもを預けるときに、「ジュースやお菓子はこれくらい」「テレビはあまり見せないで…」と、つい注文をつけてしまいがちですが、子どもを預かってもらったときは基本的に文句を言わず、祖父母の考えややり方を尊重しましょう。
特に体調不良の子どもを急遽預かってもらうときは、祖父母も必死です。
ただでさえ体調が悪いなか、大好きなママもパパもいない状態で、なんとか機嫌良く、泣くことなく過ごさせてあげたいと、心を削ってがんばってくれています。
常に祖父母の気持ちを考えながら、「ありがとう」「ごめんなさい」を素直に伝えつつ、いい関係を築いてほしいです。

また、「1.祖父母を頼りすぎない」「9.祖父母の生活、年齢、体力を気にかける」。
これもとても大切な項目です。
パパとママがどっぷり疲れるほどのハードな育児ともなれば、年齢を重ねている祖父母はさらに大変。また、我が子を育てるよりずっと気を遣うので、子どもを一日預かるだけで、心身ともに疲れてしまいます。
親という存在は、ずっと元気でいてくれる、若々しいイメージを持っているかもしれませんが、実は思っている以上に年老いています。出産年齢もこれだけ上がってるので、祖父母世代の年齢もぐんと上がっている現代。親に頼る分だけ、健康面の配慮もぜひ、忘れないでいてくださいね。

ー子育て世代への、とても大切なメッセージをいただきました。最後に、「孫育て」に奮闘する祖父母世代へも、メッセージをお願いします。

孫育ては、実は祖父母世代にとっても、「子育ての最後の仕事」なのかもしれません。
それは、息子や娘に過干渉になることでも、孫を思い通りに育てることでもなく、「新米ママ・パパとしての我が子を自立させ、自走させてあげること」。

その昔、自転車の補助輪を外して懸命に練習する我が子に「うしろ持ってるよ、大丈夫、大丈夫」と言いながら手を離したように、息子や娘が子育ての第一歩を踏み出すときに、そっと補助輪の役割をしてあげるのが、「孫育て」だと思っています。

祖父母は、どこまでいっても子育てのサポーター。子育ての主役はパパとママです。でも、おじいちゃんおばあちゃんからたくさんの愛情をもらうことではじめて、育まれていく心があると、私は思います。

孫が育ち、息子や娘が親として自立する過程を温かく見守りつつ、自分の人生も大切にし、無理をせず関わってほしいですね。

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孫育ては、家族みんなが協力し合い、楽しみながら進めるもの。祖父母の経験と愛情、パパママの新しい知識と方針がうまく合わさることで、子どもたちは豊かな環境で育っていきます。すれ違うこともあるかもしれませんが、対話を重ね、世代間ギャップを楽しみながら、みんなで乗り越えていきたいですね。

ぼうだあきこさん、三回にわたり、貴重なお話を聞かせてくださり、ありがとうございました。

前回の記事はこちら↓

子育てと孫育て vol.1「祖父母世代のギャップと向き合うには？」

子育てと孫育て vol.2「祖父母世代との距離感の取り方・考え方」

ライター　後藤麻衣子